事業再生の現場から

貸出金利引き上げの足音が…④

貸出金利引き上げの足音が…では無くなりつつあります。

足音どころか、最近では取引先に行く度に「銀行から(金利引き上げの)話があったよ」と、ほぼ毎日のように借入金利引き上げに伴う中小企業経営者の不安な声を聞くようになってきました。

そんな中、今週月曜日に一緒にランチをした時に教えていただいたD社長の話は面白かったです。

 

D社は帝国データバンクの評点で57点を誇る中小ですが「優良」な企業です。

TDBで51点以上の評価とは相当な「難関」で、55点以上を保持する中小企業は「稀」な存在だと、私は思っています。

一説では、「かのトヨタ自動車でさえ、TDB評点では60点に届かないんだ」と、実しやかに語られていた時代がありました。それだけTDB評点とは権威あるものなのでしょう。

そんなD社と融資取引をしている地銀E行が、融資金利の見直しのお願いのため、D社長を訪ねて来たのだそうです。

他行(メイン行)からのアプローチもあり、「ははーんっ、利上げの要請だな」と目星を付け、担当者が口火を切るのを待っていたD社長ですが、E行担当者はなかなか本題に入りません。

社長が「金利の件じゃないの?」と水を向けると、ようやく金利交渉に入ったようなのですが、担当者の口からは”しどろもどろ”の、説明とは言い難いセツメイがあったそうです。

「Eさん、もっと堂々と説明しなさいよ。別に悪い事をしに来ているんじゃないんでしょ。上司から指示があってD社に対する適用金利を引き上げて来るよう、私(D社長)の同意を貰って来いと。それなら堂々と、利上げの理由と背景を教えてよ」D社長が助け舟を出して、ようやくE行の訪問目的がD社長の口から語られたようなのです。

しかも「良いよ、金利の引き上げ、OK。了解しました」とD社長が、自ら切り出した問いに自ら答えて…E担当は帰路に着いたそうです。

 

D社長「E行から”何とかお付き合いで…”と懇願されて借入をしているが、利上げ要請もあった事だし、手形貸付の期限到来前だけど 9月中に完済しちゃうつもりでさぁ。だから利上げOKって言ったんだ。今、E行には4億円くらい預金あるし、借入は2,000万円だけだからね」

なるほど、それでE担当は利上げの口火を切り難かった訳だ…

こういうケースもあるんだ…

 

ある銀行関係者からは「この20数年、利上げ交渉という経験が無い職員が渉外・融資の担当になっているので、取引先への利上げのため”ロールプレイング(模擬体験)”を取り込んだりしています」という話も聞きました。

利上げ交渉を巡っては、金融機関側も大変なようです。

 

 

 



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