産業革新機構が、経営再建中のシャープの子会社化を検討していると、12/2付で読売新聞が報じた。
「子会社化」と言うからには、同機構はシャープ株式の50%以上を取得しなければならない。その費用は凡そ2,000億円だと言うのだが…。
産業革新機構は自らが投資家であり、且つ事業再生のプロ集団である。
通常事業再生を始めようとする時、一番ネックになるのは、「おカネ」の問題だ。
再生計画を軌道に乗せるには、知識経験と度胸、関係者を合意させられるだけのロジック(理論づけ)が必要になるのだが、最後且つ最大の障害となるのが、この「おカネ」の問題なのだ。
したがって、再生計画を「絵に描いた餅」に終わらせないようにするためには、改善や改革を実行するのに伴い発生する資金需要に備えて、予めスポンサー(資金支援者)を選定する等、入念な準備が必要である。
その点、産業革新機構は有利である。
何せ機構自体は半民半官とは言っても、“日本創生”に必要な産業・企業に対する再生支援は、言わば「国策」なのであり、大手を振って税金を再生スキームに投入できるし、“政府肝いり”なのだから税務当局も金融機関の債権放棄分を無税処理することに異存は挟まないであろう。
かくしてシャープに対する金融機関による「債権放棄」はスムーズに進むのであり、事業の分割や社外への売却、コア事業(今後の成長が期待できる事業)への集中が進むはずだ。再生事案が失敗することは無いと思われる。
と思っていたら、シャープの取引銀行が債権放棄案に反対しているので、産業革新機構による「子会社化案」は実現が難しそうだ、と他紙が報じている。
読売のスクープに対して、他紙が後追い取材で、関係者から言質を取ったのだろうか…。
おそらく同機構が絵に描いた、これら債権放棄と事業の選別、更なる大リストラ等が実現すれば、シャープは劇的な復活を遂げると思われる。
だが多額の債権放棄を伴う「私的整理」に準じる「再生スキーム」のケースでは、株主に一定の責任が求められることもあり、その場合、多くの個人株主にも損害が及ぶ可能性もある。
同機構が介在した「事業再生」がどのような手法を取るのかは別としても、先端技術で業容を拡大して来たシャープの社風やのれん(伝統)が継続できることを、強く望んでいる。
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