「昔の銀行さんは良かった…。家族ぐるみの付き合いもしていたし、夕ご飯もウチで良く食べて行った…。月末の集金が集まるまで、こたつで麻雀なんてしてた人もいたっけ…」
「△△銀行の■■さんは、要領が悪くてねぇ。でもウチのために一生懸命支店長に掛け合ってくれて、工場の設備資金を出してくれたの。性格が大人しくて「お嫁さんの来てがない」って故郷のお母さんが心配していたけど、今じゃあ子供さんが4人も居るって手紙で知らせてくれたわ。うちの子が小さい時に、■■さんの実家に泊りがけで遊びに行ったりしてたのよ」
「××銀行の○○さんが結婚した時は、私達夫婦が仲人を頼まれたのよ。後から聞いたら、銀行員同士が社内結婚する時は、支店長が仲人に立つのが普通らしいって…。だから○○さん支店長に睨まれちゃって出世できなかったらどうしよう?って主人と心配してた時もあったんだけど、結果的に○○さん本部の部長さんにまで出世して、この前退職だってお手紙戴いたの、今度は関連会社の役員だって…」
いずれも、私が相談を受けている中小企業の社長(会長)夫人の皆様の回述(実話)です。
今の時代、取引銀行の担当者等と、上記の如き“胸襟を開いた”関係を維持している取引先は少ないと思います。(皆無ではないと思いますが…)
顧客とあまりに親密になり過ぎた場合のデメリット(過去にも散々あったことでしょうし)もあり、コンプライアンスの視点からも、「過度な」付き合いは、近年銀行側から抑制され気味です。
必要な時に必要な資金供給をお願いできる銀行、その中でも割と近しい関係にあると顧客側が感じている「担当者」と、良好な関係を作って置こうと、昔から経営者は一定の配慮を続けて来たことが冒頭の話にも覗えると思います。
こういう会社は、業歴が長く(少なくとも高度成長期以前に起業)、経営者がおっとり型の善人(神経質でない)、製造・物販等材料やモノの仕入が必要不可欠な業種の企業さんに多いような気がします。
この手の中小企業では、現場で働く社長に代わって総務・経理等の細かい仕事を一手に引き受けているのが、奥さま(社長夫人)であることが多いと思います。
従って銀行担当者と社内で一番顔を合わせたり、親交を深めたりするうえで社長夫人の役割は極めて重要だと言えるのです。
渉外担当者の奥さま格付(お気に入り度)次第で、出入りする銀行の取引量や質が左右されるのが日常茶飯事ですから、如何に社長夫人の覚えを愛でたくするか、これは銀行マンの処世術のひとつであると思います。
次回に続く…。
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