事業再生の現場から

事例集③-②

昨日の続き…

当初は、第二会社方式で伝統ある家業を継続しようと思っていた当社でしたが「取引先に迷惑を掛けないで閉められるなら」の条件付きながら、関係者の結論は「廃業已む無し」に変わって行きました。

資金繰りを担当していた社長夫人は、銀行からの新規融資が止まってからと言うもの、(凡そ2年間も新規融資無)自分達の年金や郵便貯金を取り崩して会社の運転資金に注ぎ込み、何とか支払手形の決済を済ませているような言わば“自転車操業”状態で、いつまでもこの状態が続く訳が無いことを充分過ぎる程知っていましたので「この苦労を嫁にさせるには忍びない」と、ずっと思っていたそうです。(後日談ですが)

当社は一次問屋(商社=仕入先)向に、1千数百万円の「保証金」を積んでいました。

メイン行は気づかなかったようですが、度重なる売上減少で商社からの仕入債務は数百万円程度に減っていました。

更に本社(倉庫)の大半は、同業者で形成する組合金融の担保に提供しており、銀行が担保として徴求している物件は、組合とは別の言ってみれば“つまんない物件”だけです。

組合には散々交渉して「代物弁済」扱で、借入金をチャラにして貰いました。

当社の「廃業」により貸し倒れが発生して挙句ロスを顕在化させたくない組合と、キャッシュを用意しなくても債務圧縮効果を生み出せ、組合に迷惑を掛けたくない想いの当社のニーズが合致したのです。

そうこうしている間にも、銀行はサービサーへの売却や保証協会代弁手続きを進めて行きます。

時間は刻一刻と進んで行きました…。

その間に得意先からの売掛金回収も急ぎ、支手決済資金と買掛金弁済額相当分を、保証金残金と売掛金回収分とで何とか用意する事ができました。

手形は銀行の当座預金が強制解約される恐れがあるので、一件一件社長たちが仕入先に事情を説明して買戻しです。

中には「裏書」して回した手形を買い戻して頂いて用意しておいてくれた業者もありました。

この会社の社長夫妻や先代、先々代が積んだ「徳」のお蔭なんだと思います、取引先は皆さん協力的でした。

販売先には「お世話になりました、後の業務は○○社に引き継いで貰いましたのでご安心ください」と。

○○社は同業大手ですが、この時の当社の手際が鮮やかで誠実だったと、後にご長男を営業幹部として採用してくださる事になりました。

 

近況を語り合い、ランチをごちそうになりながら奥さまが仰います。

「あの時、決断して本当に良かった…」

これがあるから、私達やっていられるのです!(^^)!



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