事業再生の現場から

先日の事ですが…。

某社を訪問していると、社長の30年来のご友人と言われるご老人が来社され、同じ席でお話をする

ことになりました。

髭をたっぷりと蓄え、上質なスーツを着込んだ押し出しの良い“大店の御隠居”然とされた堂々の体躯の持ち主です。

威圧感たっぷりの声も、耳奥にしっかりと印象付けられましたが、社長の紹介で名刺交換をした時の光景が忘れられません。

「事業再生って、(倒産)整理屋かい？」と老紳士。

「いえいえっ、倒産しないよう毎日必死で駆け回っているんですよ(笑)」と私、必死の抵抗。

「再生ったって、倒産させなきゃ、あんたらみたいな連中は“食い扶持”も出ないんじゃないか？」

“ヤレヤレッ、困ったおっさんに引っ掛かっちゃったよ” ← 私の心の叫び

「いやーっ、真面目にやってるんでいつもピーピーです(笑)」

「倒産整理でモノを言うのは、気合と押し出しだ。よーく覚えておくことだよ。」

紳士が帰った後…。

「ごめんな村上さん、気分が悪くなっただろ。 あいつはさぁ、“下請け喰いのG”って言ってこの業界じゃ結構有名な奴なんだ」と社長さん。

「下請け喰いって？ 倒産事件で下請業者を喰っちゃうんですか？」

要するに先ほどの老紳士は、この業界(建築業界)で40年近い経営者歴を持っているけど、その中で倒産経験が4度もあって、倒産の度に“焼け太り”というか、倒産後の経営会社が大きくなって、現在の地位(従業員60名の建設会社社長)を確立したんだそうです。

「どうやって倒産の度に成長して行ったんですか？」と私。

「つまりね、倒産時に売掛金を全部懐に入れ、下請先への支払を回避する遣り方を4回やったって事さっ」

で、この老紳士に付いた異名が「下請け喰いのG」って事なんですって。

何度も同じことを繰り返しながら、その度に“喰い物”にされる下請業者がいる事に驚きますが、社長曰く「この業界は、仕事を持っている人が正義で良い人なんです。しかも支払がきちんとしていれば、１度仕事をしてしまうと、なかなか離れられなくなってしまうんだよ。」

仕事を持っている人(業者)が正義ねぇ…。

続きは次回に…。