事業再生の現場から

ウィルホームの倒産②

昨日の続き…

「破産はしないでしょ」と私が申し上げたところ、知人が怪訝な表情で聞き返して来ました。

「なんで?」

「弁護士と相談しているって言うんだから、当然、破産前提なんじゃないの?」

確かに文書には「弁護士と今後の対応を協議中」と書いてあります、知人の言うように「弁護士と相談中なのだから、法的に破産して責任を全うする」可能性が高いのかも知れません。

でも、私にはそうは思えないのです。

 

一般的な話として申し上げると、破産事件の99%は「自己」破産だと言います。

つまり「自己の判断」として、破産申立を選択するのです。

裁判所によって破産申立が受理されると、法人などの負債総額の大きい破産事件には、裁判所から「破産管財人」が選任されます。破産申立人の財産を管理するのが目的のひとつです。

また管財人の大きな役割として、債権者に配当する申立人の財産が「不正に」社外流出していないか、その調査・回収を進めることがあると聞きます。

破産申立前2年以前まで遡って管財人に会社や関係者の財産調査をされて、資産の隠匿などが明るみに出た結果、財産没収の憂き目に遭ったケースもあるようです。

簡単に「自己破産」を選択した結果、過去に遡って管財人に詳細調査され、「再起のための虎の子」を失うかも知れないリスクを鋭敏な経営者が選択するでしょうか?

破産を自ら選択しない限り、このリスクは回避することができます。

極々たまに金融機関が「一罰百戒」を目的に「債権者申立」破産を申請することもありますが(まさに雅秀殿の場合がそうですが)、一般債権者の場合、配当可能性が限りなくゼロに近い中で、新たな費用を負担して(裁判所に支払う予納金等の費用は申立人の負担になる)敢えて債務者を破産させる行為など、滅多にないことです。

 

ウィルホームを率いた赤尾杉社長は、マスコミにも度々登場し、有能な若手経営者として県内でも名を馳せた方だと聞きます。

不幸にして今回の倒産劇の当事者となってしまいましたが、そんな有能な方ですから、機会があればまた立ち上がるでしょう。

今回の決着をどうつけるかで、その評価と将来が決まって来るような気がします。債務超過で支払困難となった経緯や、事業停止に至るまでの軌跡を明らかにすべきでしょう。

今回登場して貰った友人には気の毒ですが、たぶん会社には残余財産などないのでしょう。破産しても配当は期待できないと思います。

仮に支払はできなくても、少なくとも「説明責任は果たすべき」だと思うのですが…。

 

 

 



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