事業再生の現場から

時効成立②

昨日の続き…

昔からの商家の生まれであるA元社長の奥さまは、経理担当者として家業を盛り立て、ご主人を長い間支えて来られました。

売上や仕入・経費支払等の記録は無論「手書き」で、イマドキの販売管理などのシステムに頼る事なく、10年くらい前の支払や入金等についても「あーぁ、アレはこう、ソレはこう」と、事業から離れて数年経った今でも明敏な頭脳で明確な回答をしてくださいます。

まさに驚異の記憶力!!

昔の大店(おおだな)の実力の片鱗を見せつけられる思いです。

「奥さん!保証協会への返済ですけど、お店を閉めて数か月は続けていたような気がするんですが、あれはいつまで続けていたんでしたっけ?」私が奥さまに尋ねます。

「あれはねぇ、確か閉店して2か月くらいは払っていたような気がするわ。あっ、正確に知りたいなら支払明細の帳簿があるわよ、ちょっと待っててね♪」自室に戻られ、モノの2~3分で黒表紙の分厚い帳簿を手に奥さまがリビングに戻って来ました。

「えーっとね、最後の返済は、平成21年の〇月××日ね。これが最後よ」

「あっそーかぁ、確か個人破産も検討するって言うんで、○月に▽▽先生の事務所に行きましたね。結局会社も破産するには100万円単位でおカネがかかるって言うんで止めたんでしたよね、そぉーかぁ、その時に保証協会とかサービサーにも破産するかも…って知らせたうえで返済を止めたんでしたね」と私。

徐々に記憶が戻って来ました。

「あれからサービサーも保証協会も一回も来なくなっちゃったよ」とA社長。

「あと2か月余で貸金の時効になる5年になっちゃうんですよ、それで保証協会がわざわざ御自宅まで足を運んで来たんですねぇ」私一人で納得。

「時効っていうと、借金が無くなっちゃうの?」とA社長。

「消滅時効って言って、貸金債権は5年間弁済や差押・訴訟なんかで中断しとかないと時効が成立するんです。ただいったん時効が成立しても弁済とかで債務を承認すると、また元に戻っちゃうんですが…。それと時効を主張するには「時効の援用」と言って、時効確認の訴訟とかが必要になると思います。まぁ債権者が時効成立後、債権を請求して来たらの話ですがね」

「そうなると、うちの場合はどうなるの?」

「このまま○月××日まで弁済や債務承認、或いは差押か訴訟予告の請求等が来なければ、時効は成立ですねぇ(笑)」

「ただ訴訟前提の内容証明等の請求が来ると、時効期日は6か月延びるんだと思います、詳細が知りたければうちの弁護士に確認しますが…」

まだもう少し続きそうです、すみません明日に続けます。



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